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Chapter 1-3 革命的な技術・ボーカロイド 

 結局のところ、ボーカロイドって何がすごいの?やっぱり一部のオタクのおもちゃなんじゃないの?とお考えの方は多いと思います。ですが、ボーカロイドは既存の音楽業界を揺るがし、一変させてしまう可能性を秘めた、そんな技術なのです。
 この節では、ボーカロイドという技術がなぜすごいのかを、技術、音楽、ビジネスという3つの側面でご紹介します。
※ヤマハが開発したこの技術の正式名称は「VOCALOID」ですが、記述を平易にするために、この記事では「ボーカロイド」に統一します。

<ポイント>
・人に頼らなくても歌声を合成できることで、歌ものの曲を作れるようになった
・安定した歌声をいつでも好きなときに提供してくれることで、曲が作りやすくなったり、人間では歌えないような歌を作ることができるようになった
・企業や組織ではなく個人が安いコストで質の高い曲を提供することで、音楽のビジネスに新たな形と場を生み出す土台となっている



1)技術的な側面:人に頼らなくても「歌声」を入手できる

 シンセサイザーの技術革新で、バンドの演奏に関しては、MP3で聞く分には十分な音が、個人でも手が届くような機材で合成できるようになりました。しかしながら、人の歌声の合成は非常に難しく、曲として使うには不十分でした。歌モノの曲を曲を作るには、人のつてをたどって歌ってもらうか、自分で歌うしかなかったのです。
 ボーカロイドはこの「使用に耐えうるライン」を初めて突破し、実用化された技術です。
 ボーカロイドがいれば、男性作家であっても、女性の歌手の知り合いがいなくても、女声の楽曲が作れますし、自分の声の質が悪くても、安定した男声の楽曲が作れるのです。作家は自身の音楽センスをフルに発揮して、思う存分作曲することができます。
 ボーカロイドは調整次第で、まるで人が歌っているような声を合成できますが、その調整には職人的な技が必要になります。近年人間の歌唱を真似てボーカロイドの声を調整する「ぼかりす」という技術が開発され、またボーカロイド自身も改良が加えられるなど、さらに人に近い歌声を簡単に合成できるよう、研究が進められています。
 だからといって人が要らなくなる、ということはありません。生バンドには生バンドのよさがあるのと同じように、生歌には生歌のよさがあります。またボーカロイドの歌声は「元の歌声」に依存しますから、特徴的な歌声の歌手の代用にはなりません。ニコニコ動画ではボーカロイドの曲をのど自慢の人々が歌う「歌ってみた」という動画ジャンルが好評を博しています。


2)音楽的な側面:安定したオンデマンドな歌声を安価に提供

 人の歌声を合成する、という画期的な製品にも関わらず、販売価格は1万5000円程度。DTMの機材の中では、比較的安い方なのではないでしょうか。
 しかもこの「歌手」は、体調や気分に左右されることなく安定した歌声を提供し、パラメーターの設定できる範囲内であれば、作家の望むとおりに声の質を変えることができます。疲れを知らず眠ることもなく、場所も取りません。どんな夜中だろうと突然だろうと、作家が歌って欲しいと思った時に、文句一つ言わず歌ってくれるのです。
 さらに、人間には歌唱が非常に難しい、特殊な拍子やリズム変化・高低差のある歌詞や早口の歌詞を歌わせることも可能です。
 これにより、作家は実験的な曲でも気軽に作成・発表することができるようになりました。
 声が安定しているということは、逆に言えば声のバリエーションが限定される、ということを意味しています。そこで現在は、声に「表情」を持たせる方法が研究されています。クリプトン社はいろんな表情の声を録音し複数のデータベースを提供することで解決を図ろうとしています(「初音ミク・アペンド」)。


3)ビジネス的な側面:一般人が生産したものを消費する世界

 ボーカロイドによって「最後のピース」が埋められたことで、作曲活動は本格的に、一般人の手の届くところに降りてくることとなりました。センスはあっても生業にはできなかった人々が、一般流通の曲に比肩するような名曲を次々生み出していきます。
 再生数のカウントとすぐその場でつけられるコメント機能を有した「ニコニコ動画」という発表の場があったことが、作家たちにとって大きな力になりました。作家たちは「ニコニコ動画」を土台に数々の作品を発表、人気を得ていくことになります。
 作曲した楽曲をCDにする技術と、こうした自主制作盤を販売する「即売会」という場は昔からありました。「コミックマーケット」はそうした「即売会」の一例です。これらを利用することで、かつてレコード会社や音楽事務所、小売店の独壇場だった、楽曲製作から流通に至るまでの部分を、個人でもある程度できるようになりました。
 ボカロ曲や関連本を専門的に扱う即売会として「The Voc@loid M@ster(ザ・ボーカロイドマスター/ボーマス)」というイベントがあります。開始から終了まで4時間ほどのこのイベントの中で、トップクラスの人気作家の新作CDとなると、1000枚単位で売れていくのです。
 作曲から編曲までを全て個人でPC上でできるため、コストも低く、それはそのまま価格に反映されています。3~5曲入りのマキシシングルで300円~500円、10曲以上入ったアルバムで1000円~1500円が相場となっています。こうした低価格もあいまって活況を呈しています。
 アメリカのSF作家であるウィリアム・ギブスン氏はボーカロイドについて「クラウドソーシング(組織によらず不特定多数に対する業務委託)」を現実にした存在であるのだろうか、と評しています。
 実際、有名な作家が大手レコード会社に所属し、アニメの主題歌を作ったり、複数の作家たちの曲を集めたCDがオリコン週間1位を獲得したり、といったことは、「クラウドソーシング」を具現化したものである、と言えるかもしれません。
 このように、ボーカロイドは、既存の音楽ビジネスに対する新たな形を生み出す技術的な土台となっています。
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